どうしてか三四郎が気になってしまう

三四郎オールナイトニッポン0のリスナーなんだけど、ほんと毎週毎週なんでこんなもん聞いてるんだ…と腹立ててる。
確かにおもしろいんだけど、だから毎週聞いてるんだけど、芸人の深夜ラジオを聞き終わったあとのひっそりとそれでいて満たされる充実感が三四郎のラジオにはまるでない。毎週どこか「あれ…こんなもんでいいのか?」とちょっとした疑問を抱えたままさよならされてしまう。
そのそっけなさが実に三四郎らしく、付かず離れずの絶妙な距離を保ったままなんだかんだでもう3年目の壁を越えている。もう3年か。3年経って、ほぼ毎週聞いてるのにまだ「三四郎ファン」になりきれず、わたしは今日も熱烈ではなく冷静に三四郎を応援してしまっている。

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これANN0の公式画像なんだけど、みてこの小宮。完全に舐めてるだろ。ニッポン放送はイベント、SPウィーク、広告なにかあるごとにこれ一生使い続けるからな。もう何年前の誰だよ、ってなっても使い続けるからな。小宮ニッポン放送の画像使いまわし力を侮ってたにちがいないよ。

テレビのほうが大事

これはわりと衝撃的だったんだけど、三四郎は2人揃ってはっきりと公言している。「ラジオよりテレビのほうが大事」だと。芸人はとにかくラジオをやりたがる、そしてそれをわたしはありがたがる。テレビでは時間がもらえないような自身のフリートークを存分にでき、信者的なリスナーを獲得し、仲が深まり、波及する、というラジオ独特のおれとお前だけの特別な時間はなにものにも代えられないもの、なはずなのに。ラジオがおもしろい=本物、という構図が存在した時代がたしかにあったのに。
ナインティナインオールナイトニッポンがなければただのアイドルテレビおもちゃ芸人としてもっとバカにされていただろう。でもナイナイにはラジオがあった。だから信じれた。

相田は先日まで実家に暮していた。しかし一人暮らしをしようと思い立ち、不動産屋さんに行き、内見をして、契約の書類を~と、なんだかんだで相田の一人暮らし計画は再三ラジオで話していた。何度もその話題になったし、34歳の男が初めて一人暮らしをするという出来事をハプニングやサプライズいろいろ経てリスナーは相田の自立を見守ってきた。相田に向けた物件を紹介するというネタコーナーにまで発展し、番組全体で盛り上がっていた。
しかし、ダウンタウンDXでの1エピソードとしてあっさりと、相田がすでに一人暮らしを始めていたことが写真とともに明かされた。さらりと。一切もったいぶらずに。あれほどリスナーを巻き込んでいたのに、まさかの、一人暮らしをついに開始したことをラジオで言わなかったのである。まじかよ。しかし悪びれず言うのだ「だってテレビのほうが大事だもん」と。

なんかこう、芸人の深夜ラジオをいくつも何年も聞いていて、これほどまでに自分たちの番組をよそよそしくするコンビっていただろうかと目をつむって思い返してしまった。いや、いない。ラジオはいつだって一番近くて一番大事にされていたはずだった。
三四郎、なんなんだ。*1

小宮の悪態がすごい

テレビでもおなじみの小宮の悪態というかぼやきが、えぐい。「独特の視点」でとか「斜めから見た」とかいう斬新なものではなく、ただ純粋に文句がすごい。

例えば、つい先日番組ディレクターの結婚披露宴に参加した小宮の談をおなじ披露宴に出ておなじテーブルだったというアルコ&ピースの話と比較してみる。

  • 開始時間は17時

アルピー「結婚式って朝早いことも多いけど、ちょうどいい時間でよかった」
小宮「このまま家でゆっくりだらだらしていたいと思わせる出発時間。録画してたアンビリーバボーが最後まで見れなかった」

  • 開催場所は渋谷

アルピー「行きやすくてよかった」
小宮「駅からめちゃくちゃ歩かされてひどい。靴が不慣れで足も痛てえし。会場は駅の中であれ」

  • 石井ディレクター

アルピー「いまも担当してくれてお世話になってる」
小宮「スケジュールに入ってたから披露宴に参加しただけ。他の仕事が入るだろうと準備をしておらず家を出るときドタキャンもよぎった。そもそもいつもなら(営業で)披露宴にいってお金もらってるのに、ご祝儀つつまなきゃいけないとか、なんなの。」

このありさまである。いちいちなにかにつけて悪態をつく小宮。もう呆れて笑うしかない。
小宮はずるい。エピソードそのものがおもしろいというわけではないのに、あっけにとられていつのまにか笑ってしまう。毎週披露される10~15分のフリートークで特別な出来事はなにもない。ただの日常ただの光景を、小宮のつたない(本当につたない)描写ととびっきりの悪態で成立させてしまうんだから、人間って捻くれきるとここまでいけるんだなと感心してしまう。「悪口」でも「毒舌」でもない、だれにもできない小宮だけの文句と悪態。

相田は別に隠れてない

コンビで片方だけがポップな売れ方をしていて、コンビのラジオは人気で…というと、目立たないほうがハチャメチャにおもしろい!というのは定説じゃないだろうか。
いまこの法則にびたっとハマっているのはハライチの岩井。ラジオは完全に岩井の独壇場で(澤部もサイコー)持ち前のセンスが炸裂している。岩井はすごい。無駄のない言葉選びとまるで同じ地面に足をつけていないようなふわっと浮いた視点から話す流暢さ、そしてあのシャープな顔面とそぎ落とされた体型。造形まですごい、まるで信者を囲うために生まれてきたかのようないでたちに、それでいておはスタおーはーとかやっちゃう狂人ぷり。そら人気になるわな。じゃないほうがこんなにおもしろいんだもの。

こうなると当然、相田って実はおもしろいんじゃないの?ラジオだと相田が好き勝手やりたい放題やってんじゃないの?と期待してしまうが、相田はべつに特別おもしろくはない。いやはっきりこういうの、ものすごく抵抗あるんだけど、だけど変な印象なしに相田は相田だ。ラジオでハネてるからといって相田が神格化していることは一切ない。ふつうに相田だ。めちゃくちゃ良い声でめちゃくちゃふつうの相槌を打っている。

三四郎のANN0は2人がそれぞれにフリートークをする時間が与えられてるんだけど、小宮の話はまあなんだかんだで吹き出してしまうこともままある。しかし相田はどうだ。ふつうのはなしを軽快に話している。いや誤解なきようにいうと、おもしろくしようという気概はあるものの、無理せんでええねんで…とこちらの優しさが求められているような気がする。
しかも小宮がアレだから相田は常識人でいる、という枠ももはやなく(漫才では相田がボケだし)とくにエピソードがなかったと察する放送回では、とにかく周りを否定するという手法をとっているため、小宮の傍若無人っぷりを聞いたあと相田の無礼を聞かされるというとんでもない日があったりする。

ところで先日、三四郎のファンのひとと話す機会があった。マセキのライブに通って出待ちしているような彼女は「相田さんかっこいい。会社にいたらすきになっちゃう」と言っていて、ああよかった相田にもちゃんとこういう層が一定数いてくれて助かった~と、なぜか安心できたので、みなさんにも共有しておく。

じゃじゃ馬を乗りこなせる

三四郎のANN0に先日なかやまきんに君がゲストで登場した。なかやまきんに君である。手練のMCでもさじを投げる異常者・なかやまきんに君
しかし三四郎は見事に捌ききり、あっぱれな2時間にしたのだ。突然の暴走や急な弱気、謎のキャラ、独特のノリを強要するまさに異常者のなかやまきんに君に翻弄されるかたちでかなりおもしろい放送になった。反響を確認したところわたしの周囲のラジオファンから絶賛の声も多かったので、まちがいなく素晴らしい回だったとおもう。
しかし想像できるだろうか。テレビではぽんこつ扱いされる小宮と、なにもない相田がこんなにも奮闘する姿を。絡みに強い三四郎。わたしはラジオを通して三四郎の見方が変わった。個人的には三四郎のラジオにおいてゲストが登場した回ははずれなくおもしろいと思っている。

リスナーとの距離を縮めない

10年前の芸人深夜ラジオといえば、リスナーは冴えない奴ばかり、童貞キモメン卑屈野郎という前提に腐ったラジオを届けるおもしろみというのが定番だったようにおもう。(いまもまだあるけど)社会不適合なやつが集まって密談しているようなサバイブする感覚、おもしろいよね最高よね。
しかし三四郎はべつにリスナーをカテゴライズしない。ただの人、ただのお客さんとして扱う。なんのフィルターもなく、リスナーをキャラクター化せず、どんなひとが聞いていても構わないという装いだ。
それによりリスナーは三四郎に認められたひとたちではなく、ただラジオを聴いているひとになる。いや実際そうだしまちがってない。そのおかげでわたしは三四郎を一切身近に感じないし、三四郎もこちらに歩み寄ってくれたりしない。深夜27時だぞ?27時から29時って何時から何時なんだよ!?おかしいじゃん、こんな時間に生放送を聞いてるなんて、どうかしてるじゃん。もっと認めてくれてもよくない?
深夜ラジオ特有の「共犯感」を求めないし、そんな距離感に頼ろうともしないのが、ああこのそっけなさこそ三四郎と思わせられる。薄い。こっちとそっちの密度が薄い。

それでいて、じゃあ三四郎2人がめちゃくちゃ仲がよくてリスナーがそれを微笑ましく見守っているような番組かといえば(おぎやはぎバナナマンのような)そうでもない。三四郎は仲悪くはないだろうけど特別2人だけしか知りえないとっておきの話を教えてくれるようなわくわくした展開はない。2人の密度すら不明。

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そんなこんなで、なんで熱心に聴いてしまうのか分からないまま今日も再生ボタンを押してしまう。
しかしこの3年の三四郎のはなしを聞けてよかったとおもう。ダウンタウンと初共演した話、タカさんに会って逃げた話、どんどん売れていく小宮を目の当たりできた。当初はラジオで話すネタを探しにわざわざザリガニ採りにいったり変なイベントに参加したりしていたのが懐かしいほどにいまはずいぶん忙しそうだ。(ラジオのためにわざとやらかしてやろうという意気込みはまだありそうだけど)
それに小宮の並々ならぬお笑いへの愛情も感じれる。小宮は根っからの芸人で、頭もいいし人間も狂ってる。その充分な素質のうえでさらにお笑いがすきですきでたまらなさそうだ。好きなことをやって生きていけているんだな、かわいいな応援したいなと素直におもってしまう。

そんな三四郎。ラジオ聞いてみてーとは安易にすすめない。いい日もあればわるい日もあるし。

*1:ちなみにこの「テレビのほうが大事」は相田がちょっとしたボケで言ったのを小宮が「うん、それは分かる」と返答していて空気が!?!!?となったことがある、つっこまない小宮。むしろ狂気小宮。